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還暦を過ぎた今でも、「モンロー」と中学生の頃から呼んでいた先生のまろやかなお尻の色っぽさ。あの腰高から流れるような足への線は、昨日のようにリアルに甦る姿です。
しかも、その上、一糸まとわぬ先生のヌードの女体を瞼の裏にしっかり焼き付けたあの記憶は、今でもリアルに思い出します。さあ、それでは読んで見てください。
ぼくが京都の大学に入学してから、瞬く間に月日が過ぎていった。
あの頃も、お互いに恋しくなると、ぼくが神戸へ帰るか、先生がぼくの下宿に訪れてくれた。
いつも先生の肌が恋しくなる頃、ぼくの気持が分かるかのように先生はさりげなく現われてくれた。
連絡をくれることもあれば突然のこともあった。
先生もぼくの若々しい身体がもう忘れなくなっていたのだろう。
ぼくの下宿は銀閣寺道の電停を北の方に上がる住宅街の真ん中にあった。
周囲の閑静な民家の中、ひときわ古めかしく目立つ2階建ての古アパートだ。
まるで小さな小学校の校舎のような作りで真ん中に広い廊下が東西にとおり、両側に4部屋ほど連なってあり、ぼくの部屋は2階の東の端にあった。
桜や梅の樹に囲まれたアパートの門扉はあっても何時も開け放たれていたから、誰でもぼくの部屋には直接上がってくることが出来た。
入り口の大家さんの部屋から全てが丸見えだから、ぼくの部屋に時折訪ねてくる先生の姿もしっかり見ていたはずだ。
なにも言わなかったけれど来ればいつも泊まって帰っていくのを知っていたはずだ。
かなり自由の効く京都らしいアパートでもあった。
京都に来たら、下宿に続く路でいつも大文字山が二人を見つめてくれるように現れる。
当時、よく先生は大文字の送り火を見たいと言っていた。
ぼくが2回生になったの年の8月16日、その日約束していたように先生が下宿を訪れてくれた。
「ぼくの吉田山の下宿から大きな大文字の送り火が真っ正面に見えるんや。みんなで酒盛りしながら往く夏を楽しむのがその家の恒例やて。訪問者は誰でも拒まへんねん。是非おいでよ」
そう高校からの親友はぼくを招待してくれた。
こんな幸運は滅多に無い。
その宵まで、その事は先生には黙っていた。
ぼくと先生はその日、吉田山に至る神楽岡の数十段にも渡る石段を登りながら、親友が下宿してる家を訪れた。
下宿の家族の親戚や友達、それに下宿の友達の知り合いなど、ビールとツマミをよばれながら護摩木の点火の8時を待った。
宴は若者ばかりわいわい騒ぎながら賑やかだった。
玄関を開けっぱなしにしていて、角を通る観光客も飛び入りで入ってくることも時たま年によってはあると言っていた。
ぼくも先生もすぐ打ち解けて、ビ-ルをよばれながら無礼講でワイワイとやった。
その日の宵は、送り火の点火と同時に、部屋の灯りを落としワッと歓声と供に乾杯をしたり、じっと護摩木の炎を見いっている者もいた。
広々と開け放たれた縁の袖から、先生は真っ赤に燃え上がる炎に照り映える顔を動かすこともなくじっと真っ赤な炎に見入っていた。
紅く映える灯りがかすかに頬を染めていた。
ぼくも先生もこんな素晴らしい経験は初めてだった。
先生は目の前に大きく揺れて広がる大の字の真っ赤な炎に興奮を抑えきれない表情で、沈黙の内にじっと長い間、彼方を見つめ続けていた。
真っ赤な大の文字がやがてはらりはらりと綻び崩れるように消えていく。その様をじっとみんなしんみりと眺めていた。
そして、ぽつりぽつりと送り火の炎が東山の峰の闇の中に消えていった。
やがて銀閣寺の学生アパートに二人は帰っていった。
ぼくは山焼きの炎の興奮が治まるままに、部屋の真ん中に立ったまま、先生を抱き寄せ、いつもの誘いの始まりを告げるように唇を合わせた。待ちきれなかった。
ビールの酔いの醒めやらんままに、しっとり汗の湿りを帯びたノースリブの先生の柔らかな肌を抱いた。慣れきった二人の愛の流れがあった。
慣れた二人にとってノースリーブをはだけて、両脇を紐で結んだ小さな白いショーツを抜き取り、古畳の上にいつの間にか一糸纏わぬ姿で抱き合っていた。
奇麗な女体はいつもの先生の色っぽさだったが、初めての裸体の上にセパレートの水着の跡が浮いていた。
胸の膨らみとデルタのまわりが抜けるように白い肌が残っていた。
つい先日に何処か海水浴に友達と行ったのだろう。先生にしては珍しいことだった。
そんなやらしい先生の女体の変化にぼくは刺激を受けた。
夏の日は明けた窓から快い風が入ってくる。
ぼくは夏休みに入ってからの先生との久しぶりの逢瀬に没頭していた。
先生もいつもと変わらずぼくに優しく何度も何度もぼくを呑み込んでくれた。
何も変わらなかった。ぼくは先生の優しさに癒やされていった。
疲れ切って、そのまま何時ものように身体を交えたまま微睡んでいった。
いつも、先生はぼくをきれいに拭ってくれて、眼がさめれば先生の胸に包まっていることが多かった。
抱かれながら乳房に頬ずりしていたり膣襞にふれたまま指をヌルヌルに湿らせていることもあった。
その夜、かすかな違和感と衝撃で目醒めた。
部屋の扉がコトリと鳴って廊下の暗い蛍光灯の明りが刺し込んでいた。そして何か白い灰色のものが動いた。
続いて光を受けて白い影が動いていった。
先生がトイレに行くのかなと思って再び眼を閉じていた。
いままでにもこの部屋に泊まった時は夜中にトイレに立つことがあった。
慣れなくて夜中は怖くて嫌だと言っていた。
ぼくはかすかに開かれた扉から廊下の方へ顔を覗かせてみて、びっくりすることになる。
なんと思わぬ光景が眼に飛び込んできた。一気に目が覚めてしまった。
暗い廊下の向こうにすすけた蛍光灯の灯りに白く浮き上げられた裸の女体が暗い闇を背後に佇んでいた。
一糸纏とわぬ影を浮かせた先生の白い女体が廊下の先にゆっくり歩んでいる。その光景にぼくの眼は張り付いてしまった。
あのおっとりしたした先生のヌードとは思えなかった。
白く陰りに浮くように輝やいたやらしくも美しい女体であった。
斜めにかげる影が乳房のふくよかさを蒼く輝かせていた。
太股の狭間に陰るうすい影げりが、はっとするような女体のやらしさを浮かべていた。
白く浮き上がる肌を輝かせ、暗い陰りが浮き上がり闇に隠れるようにうす暗く映える女体を眺めた。
言葉もなくただ静かにゆっくりと廊下の奥に流れるように動いていく。
やらしくてきれいな女体の陰を眺めていた。
ゆっくり蠢く女体の美しさがぼくを現実から目ざめさせていた。
成熟した女体のきれいな姿がそこにあった。
やがてトイレの戸板が開き女体がすっと中に消えていった。
ぼくは唾を飲み込むのも忘れて、次に廊下に現れる剥き出しの女体をじっと待った。
カラコロとトイレの履き物の鳴る音が闇に響き、すっと再び開かれた戸から艶めかしい女体がそのままの姿を再び廊下の明りの下に浮かべた。
慌てる分けでもなく、人の眼を気にするわけではない大胆な影絵だった。
太股に挟まれた陰りを隠す素振りもなく、何者かにいざなわれていくように、ぼくの部屋に向かって静かに近づいてくる。
女体の暗闇の輪郭が暗闇の女体の姿になって迫ってくる。
ぼくは扉の隙間を静かに閉じて、そのままタオルケットと煎餅布団の中に潜り込んでしまった。
じっと息を詰めて、そのままぼくは眠りを装っていた。
眼を瞑りながら震えるほどきれいな先生の女体思うと、それはエロっぽく美しかった。
朝、目ざめても、ぼくは先生にはそのことを言うことは出来なかった。
ぼくと先生の間に突然吹き込んできた大きな違和感だった。
その日を境に、先生とぼくの気持にささいな隙間の風が忍び込んでいるのを感じた。
些細なことなのかも知れないが、心の中にぼく以外の何か知らない異物を心の底に飲んでいた。若いが男と女の間に通う事のない異物であったのだろう。
いつも安心して先生に夢中になっているはずのぼくの何かがピンと感じる違和感だった。
それはいつも挨拶のように交わしあう唇と唇を合せるリズムの何かが違っていたことから始まり、今まで何度も脱がした先生のショーツのなかで記憶のない両脇を紐で結んだ小さな若向きの白いショーツはぼくにとって何時もの先生のものではなかった。
脂っぽい女の匂いとヌルっとした雌を漂わす愛液の滴りが女体の奥から滲んでいた。
慈しむようなお姉さんのようなしっとりした優しさが影をひそめ、成熟した女の脂っぽさの隠しおおせない雰囲気がぬるりと滲んでいた。
今から思えば先生に男の匂いがかすかな影のようにチラつき初めていたのだ。
その頃から、ぼくも知っている中学の同僚教師がよく話の端に上がってくるのを敏感に感じ取っていた。
背が高くスポーツマンタイプの数学の先生だった。
「茶目」と生徒からアダナで呼ばれ人気があった。
ぼくと男女の関係が続いているうちに、先生はしっとりと謎めいた色気が溢れるように滲み出ていた。同僚の男性教師は、先生に堪らない熟女の匂いを嗅ぎとっていたのだろう。
ぼくには、もう勝ち目はなかった。
いつの間にかぼくには優しいお姉さんのような先生が成熟した女の魅力をプンプン匂わせていたのだろう。
ぼくの先生に向けた憧れと愛しさを含んだ情熱が、インテリの硬い女の殻を裂き、いつの間にかぬるりとした雌の匂いを開花させてしまたということだろう。
ぼくが先生に愛しさのあまり、ヌルヌルになるまで濡らさせた匂いが、先生の女の魅力を開花させるにつけ、ぼくのような若い学生ではどうにもならなくなった。
そんな男と女の皮肉な宿命がそこに露わになっていったのではないだろうか。
ひょっとしてあの頃、先生はぼくの子どもを宿したことがあったのかも知れない。
一度も先生から避妊を求められたこともなかったが、あれだけの長い日々を姉のように愛人のように肉体的に愛しんでいたのだ。
ひとたび裸同士、抱き合えば若さにまかせて何度も何度も射精して果てていったふたりだ。なにがおこっていても不思議ではない。
ぼくはその後、何年か後に子どもをもうけている。その事から考えても、ぼくの子を先生が一度は宿していたかも知れなかったと今でも思っている。
しかしそれは今ではわからないし、どうでもいいことかも知れないが、しかし、そんなことが先生とぼくが別れを決心したきっかけの一つなのかも知れない。
「女はすこしも理性がなくても簡単に母親になれるものだと分かったわ」
処女を喪失した時に、ぼくの胸の中でそうぽつりと呟いた後の女子大生の言葉を今でも鮮明に覚えている。
男と女。激しい興奮のもと、男女の陰陽のペニスとバギナが深々と結ばれたまま、最高の興奮と気持ち良さの中で、何度も何度も射精した記憶など、長い年月の流れの後には何もなく虚しく残っていない。
みんな虚ろになって朧になっている。
虚しさと同じ感情に似ている。
「虚しさ」と「虚ろ」が期せずして同じ「虚」という字で表わされることが、なにかの暗示かなとよく思うようになった。
とくにこの歳になれば、あの若き頃から今まで、時折、記憶にこびりついて残っていく一瞬の光景が生きてきた人生の証かなと思ってしまう。
ぼくにとっては、あの若き日の、8月16日・大文字の送り火の宵。あの先生の女っぽい一夜の女体や一瞬一瞬に覗かせた憂えの表情は、さまざまな思を残して今も鮮明に残っている。
今から思えば、その夏の日を境に先生はどこか別れを意識していたと思う。
「これから若い女の子とどんどんお付き合いするのよ」
「…………」
「先生はやっぱり先生だよね…」
帰りのバス停に送っていたぼくにそう先生はぽつりぽつりと呟いた。
さすが何処か淋しそうな、今から思えば、心に残る先生との別れが、あの大文字の送り火の日であったのだろう。
あの日、大文字山の峰に浮き上がった激しい真っ赤な炎に託して、ふたりの思い出を燃え尽きるまで見送ろうとしたのではないか?
その夏の日々、ぼくも先生も新しい何かを予感していたと思う。
それからずっと8月16日のその日が来るたびに、思い出とともに何となくそんな先生のきれいな表情を思い出すようになった。
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